マッチプレーってなに?
ゴルフのテレビ中継などで「マッチプレー」という言葉を聞いたことはありますか?普段私たちが楽しんでいるゴルフは、18ホールの合計打数でスコアを競う「ストロークプレー」が一般的です。
それに対してマッチプレーは、1ホールごとに勝ち負けを決めていく対戦形式です。 1対1で戦い、最終的に勝ったホールの数が多い方が勝者となります。 まるで格闘技のように、目の前の相手との駆け引きや心理戦が勝敗を大きく左右するのが特徴です。

へぇ、そんなルールがあるんだ!1ホールごとに勝負がつくなんて、なんだか新鮮だね。



そうなの!だから1ホールで大叩きしても、次のホールで切り替えて勝負できるのが面白いところなんだよ。
ストロークプレーとの違いはここ!勝敗の考え方と楽しみ方
マッチプレーとストロークプレーの最も大きな違いは、勝敗の決め方にあります。ストロークプレーは参加者全員がライバルで、規定ホールの合計打数が最も少ない人が優勝です。
一方、マッチプレーは目の前の相手にそのホールで勝つかどうかが全て。 たとえ相手がバーディーでも、自分がイーグルならそのホールは勝ち。逆に自分がダブルボギーでも、相手がトリプルボギーなら勝ちになります。1打差でも3打差でも、そのホールの勝ちという結果は同じなんです。
この違いをまとめたのが、下の表です。
項目 | ストロークプレー | マッチプレー |
---|---|---|
勝敗の決め方 | 全体の合計打数 | 1ホールごとの勝ち負けの数 |
競技相手 | 参加者全員 | 目の前の対戦相手 |
特徴 | 安定したプレーが求められる | 駆け引きや戦略性が重要になる |
1ホールで大叩きしても、失うのはそのホールだけ。 次のホールで勝てば取り返せるので、最後まで逆転のチャンスがあるのがマッチプレーの最大の魅力と言えるでしょう。



なるほど!じゃあ、1つのホールでミスしても引きずらなくていいんだ!それなら初心者でも上級者に勝てるチャンスがあるかも?



その通り!だからこそ、最後まで諦めない気持ちが大事なんだよ。調子が悪いホールがあっても、気持ちを切り替えて次のホールに集中できるのがマッチプレーの醍醐味だね。
これだけは覚えたい!マッチプレーの基本用語
マッチプレーを観戦したり、実際にプレーしたりする上で、いくつか覚えておきたい基本用語があります。これらの用語を知っているだけで、試合の状況が手に取るようにわかるようになりますよ。
特に重要なのが、勝敗の状況を示す言葉や、決着の合図となる言葉です。ここからは、マッチプレーならではの用語をわかりやすく解説していきます。
勝敗の状況を示す「アップ・ダウン」「オールスクエア」
マッチプレーの試合状況を理解するために欠かせないのが「アップ」「ダウン」「オールスクエア」という3つの言葉です。
- アップ(Up):自分が相手に対して何ホール勝ち越しているかを示す言葉です。例えば、自分が2ホール多く勝っていれば「2アップ(ツーアップ)」となります。
- ダウン(Down):自分が相手に対して何ホール負け越しているかを示す言葉です。「1ダウン(ワンダウン)」は、1ホール負け越している状態です。
- オールスクエア(All Square):両者の勝ちホール数が同じ、つまり引き分けの状態を指します。 試合のスタート時はもちろん、追いついた時にも使われます。
これらの用語は、スコアボードやテレビ中継で頻繁に使われるので、覚えておくと観戦がもっと楽しくなりますよ。
決着の合図!「〇&×(アンド)」と「ドーミーホール」
試合の終わりが近づいてくると、さらに特別な用語が登場します。それが「〇&×(アンド)」と「ドーミーホール」です。
「〇&×(アンド)」は、マッチの決着がついたことを示す表記です。例えば「3&2(スリー・アンド・ツー)」とあれば、「3アップのリードを保ったまま、残りホールが2ホールになったため、勝ちが確定した」という意味になります。 この場合、18ホール全てをプレーせずに試合が終了します。
そして「ドーミーホール」は、あと1ホール取れば(引き分け以上で)勝ちが決まるという状況になったホールのことです。 例えば、2アップで残り2ホールの状況で迎えた17番ホールがドーミーホールです。プレーしている選手にとっては、最高にプレッシャーがかかる瞬間ですね。
紳士のスポーツならではの「コンシード(OKパット)」と「ギブアップ」
マッチプレーには、ストロークプレーにはないユニークなルールがあります。「コンシード」と「ギブアップ」です。
「コンシード」とは、相手のボールがカップに非常に近い場合、「次のパットは入ったものとみなす」と相手に伝えることです。 いわゆる「OKパット」のことで、プレーをスムーズに進めるための紳士的な配慮から生まれました。ただし、相手を惑わせるための戦略として使われることもあります。
一方、「ギブアップ」は、そのホールで明らかに勝てないと判断した場合に、自ら負けを認めることです。 例えば、相手が楽々パーで上がれそうな状況で、自分は深いバンカーから脱出できずに大叩きしている、といった場面で宣言します。これも無駄なプレーを省き、次のホールに集中するための賢明な判断と言えます。



コンシードは相手への思いやりだけじゃなくて、自分のペースを保つための戦略にもなるんだよ。駆け引きが面白いよね!
知っておきたいマッチプレーならではの特別ルール
マッチプレーは、ストロークプレーと比べてルールが少し異なります。特にペナルティの扱いが大きく違うため、もしプレーする機会があれば事前にしっかり確認しておくことが大切です。
ストロークプレーなら1打罰や2打罰で済むようなミスが、マッチプレーではより厳しい罰につながることもあります。ここからは、特に注意したいマッチプレーならではのルールを2つ紹介します。
1打の重みが違う!「そのホールの負け」になる違反
マッチプレーで最も特徴的なペナルティが「そのホールの負け(Loss of Hole)」です。ストロークプレーでは通常、ルール違反をすると1打罰や2打罰が科せられますが、マッチプレーでは違反の内容によって、そのホール自体の負けが宣告されることがあります。
例えば、以下のようなケースが「そのホールの負け」に該当します。
- 相手のプレーの妨げになるような行動をとる
- 自分のボールではない球を打ってしまう(誤球)
- アドバイスを求めたり、与えたりする(キャディ以外から)
たった1つのミスがそのホールの勝敗に直結するため、ストロークプレー以上にルールを正しく理解し、慎重にプレーすることが求められます。
順番は絶対!「遠い方のボールから打つ」原則
ゴルフには「ホールから遠いボールから先に打つ(遠球先打)」という基本原則がありますが、マッチプレーではこの順番が非常に重要になります。
ストロークプレーでは、安全のためなどの理由で同伴者の合意があれば順番を変えて打つことも許容されています。しかし、マッチプレーで相手が打つべき順番のときに自分が先に打ってしまうと、それはルール違反になります。
この場合、相手は今のショットをキャンセルさせて、もう一度正しい順番で打ち直させるか、そのままプレーを続行させるかを選ぶ権利を持ちます。もし自分がナイスショットをしても、相手の判断一つで無かったことにされてしまう可能性があるのです。戦略にも関わる重要なルールなので、必ず覚えておきましょう。



えっ、打つ順番を間違えただけでそんなことになるの!?知らなかった…気をつけないと!
マッチプレーの醍醐味!観戦とプレーの楽しみ方
マッチプレーは、自分でプレーするだけでなく、観戦するのも非常に面白い競技形式です。プロの試合では、1対1の真剣勝負ならではの緊張感や、選手の心理的な駆け引きを存分に楽しむことができます。
また、仲間内でプレーする際も、いつもとは違ったスリルを味わえます。ここからは、観戦とプレー、それぞれの楽しみ方のコツを紹介します。
【観戦編】ライダーカップに注目!プロの駆け引きを楽しむコツ
マッチプレーの魅力を存分に味わえるのが、プロの団体対抗戦です。特に有名なのが、2年に一度開催されるアメリカ選抜とヨーロッパ選抜の対抗戦「ライダーカップ」です。
普段は個人で戦うトッププロたちが、国の名誉をかけてチームで戦う姿は圧巻です。観戦の際は、以下のポイントに注目するとより楽しめます。
- コンシードのタイミング:どのタイミングでOKパットを出すか。相手にプレッシャーをかけるための戦略的なコンシードは見ものです。
- 選手のペアリング:フォアボール(2人の良い方のスコアを採用)やフォアサム(2人で1つのボールを交互に打つ)での選手の組み合わせや相性。
- ドーミーホールでの攻防:追いかける側の大胆な攻めと、リードする側の堅実な守り。極限のプレッシャーの中での一打は必見です。
選手一人ひとりの表情やガッツポーズから、その場の緊張感や心理状態を読み解くのも、マッチプレー観戦の醍醐味と言えるでしょう。
【プレー編】仲間と楽しむ!初心者でも勝てる戦略の立て方
マッチプレーは、実力差があっても勝てるチャンスがあるのが面白いところ。初心者でも上級者に勝つ「ジャイアントキリング」が起こりやすいのです。仲間とプレーする際は、ぜひ積極的にマッチプレーを取り入れてみましょう。
勝つための戦略は、ストロークプレーとは少し異なります。
- 堅実なプレーを心がける:無理にバーディーを狙うより、確実にパーやボギーで上がることを目指しましょう。相手がミスをすれば、それだけでホールを取れる可能性があります。
- 相手のプレーに惑わされない:相手がスーパーショットを打っても焦らないこと。自分のプレーに集中し、一喜一憂しないメンタルが重要です。
- 得意なホールで勝負をかける:自分が得意なコースや距離のホールでは、積極的に勝ちを狙いにいきましょう。逆に苦手なホールは「引き分けでもOK」と割り切るのも一つの手です。
いつもとは違う頭脳戦が、ゴルフの新たな楽しみ方を教えてくれるはずです。



相手の調子を見ながら、自分の得意なところで勝負するのがポイントだよ。無理せず、堅実にプレーすれば勝機は必ずあるからね!
マッチプレーが採用されている主なゴルフトーナメント
現在、プロのトーナメントではストロークプレーが主流ですが、マッチプレー形式を採用している人気の大会もいくつか存在します。これらの大会は、普段のトーナメントとは一味違った興奮をファンに届けてくれます。
世界的に有名なマッチプレーの大会には、以下のようなものがあります。
- ライダーカップ:前述の通り、アメリカ選抜とヨーロッパ選抜による男子プロの団体対抗戦です。
- プレジデンツカップ:アメリカ選抜と、ヨーロッパを除く世界選抜による男子プロの団体対抗戦です。
- WGCデル・テクノロジーズ・マッチプレー:世界ゴルフ選手権(WGC)シリーズの一つとして、2023年まで開催されていた個人戦のトーナメントです。世界ランキング上位者64名が参加していました。
日本でも、過去には「日本プロゴルフマッチプレー選手権」や「ISPSハンダマッチプレー選手権」といった大会が開催され、多くの名勝負を生み出しました。
まとめ:マッチプレーでゴルフの新しい魅力を発見しよう!
今回は、ゴルフのもう一つの競技形式「マッチプレー」について、ルールや用語、楽しみ方を解説しました。
1ホールごとに勝敗が決まるマッチプレーは、目の前の相手との駆け引きや心理戦が勝敗を左右する、スリリングな対戦形式です。1つのホールで大叩きしても次のホールには影響しないため、最後まで逆転のチャンスがあり、初心者から上級者まで誰もが楽しめます。
普段のストロークプレーとは違った戦略や緊張感が、ゴルフの新たな魅力を教えてくれるはずです。次のラウンドでは、仲間を誘ってマッチプレーに挑戦してみてはいかがでしょうか?



すごく面白そう!先輩、今度俺ともマッチプレーで勝負してください!



もちろんいいよ!でも、手加減はしないから覚悟してね(笑)。一緒に楽しもう!