OKパット(ギミーパット)の基本
OKパット(ギミーパット)とは、ゴルフのプレー中に「このくらい短い距離のパットなら確実に入るだろう」と判断され、実際に打たなくても入ったものとしてカウントできる慣習です。相手プレーヤーや同伴者から「OK」と言われると、そのパットを打たずに次のホールに進めます。主に友人同士のラウンドやカジュアルなプレーで行われる一種のマナーで、プレー時間短縮や進行をスムーズにする効果があります。
呼び方のバリエーション
OKパットとギミーパット
日本では一般的に「OKパット」と呼ばれますが、英語圏では「ギミー(Gimme)」や「ギミーパット」と言います。「Gimme」は「Give me」(くれよ)が語源で、「もう入ったと認めてよ」という意味合いから来ています。国際的なゴルファーとプレーする場合は「ギミー」という言葉も覚えておくと便利です。
地域による呼称の違い
地域によって呼び方は様々です。関西圏では「OK出す」「OKもらう」という表現も使われ、北海道や東北では「ちょうだいパット」と呼ぶ地域もあります。他にも「サービスパット」「ただパット」「ノーカウント」など、地域特有の言い方があります。地元のゴルファーと回る際は、その土地の呼び方を知っておくと会話がスムーズになりますよ。
OKパットの距離感
一般的な目安
OKパットの距離に明確な基準はありませんが、一般的にはグリップ1本分(約25〜30cm)から50cm程度が目安です。「ワンクラブレングス」(クラブ1本分の長さ)を基準にするグループもあります。距離よりも「確実に入るだろう」という確信度が重要で、平らなグリーンならやや長めでも認められることがあります。
状況別の判断基準
OKパットの距離は状況によって変わります。プレーのペースが遅れている場合は少し長めのパットもOK出されることがあります。逆に勝負どころでは短い距離でも認められないこともあります。グリーンの状態や傾斜、風の状況によっても判断は変わり、良いコンディションなら長め、荒れたグリーンでは短めが基本です。
ルール上の位置づけ
公式競技での扱い
公式ゴルフルール上、OKパットは認められていません。R&AとUSGAの規則では、すべてのパットはホールに入るまで打ち続けなければなりません。公式競技やハンディキャップ申請を伴うラウンドでは、どんなに短い距離でもパットを免除できません。ストロークプレーでは特に厳格です。
プレー形式による違い
マッチプレーでは、相手がパットをコンシード(譲る)することが認められています。これが事実上の公式なOKパットです。一方、ストロークプレーでは一切認められず、最後まで打ち切らないとペナルティの対象になります。チーム戦のフォアサムやフォーボールでも、マッチプレー形式ならコンシードが可能です。
OKパットのメリット
プレーペースの向上
OKパットの最大のメリットはプレー時間の短縮です。短いパットを全員が打つ時間を省略できるため、特に混雑日には大きな効果があります。18ホールで全員が数回ずつOKパットを活用すれば、15〜20分程度の時間短縮になることも。これにより後続組への配慮にもなり、コース全体の回転率が上がります。
プレッシャーからの解放
短いパットでも緊張すると外すことがあるのがゴルフの難しさです。OKパットは「絶対に外したくない短いパット」のプレッシャーから解放してくれます。特に初心者にとって、短いパットの緊張感は大きなストレスになることも。気の利いたOKパットで仲間を救うことで、和やかな雰囲気でゴルフを楽しめます。
OKパットの出し方と受け方
誰が宣言できるか
OKパットは基本的にパットを打つプレーヤー以外の人が出すものです。自分から「このパットはOKにして」と言うのはマナー違反です。特に決まりはありませんが、そのホールのリーダー(オナー)や経験豊富なプレーヤーが判断することが多いです。迷ったときは全員の合意を得るとスムーズです。
マナーとしての伝え方
OKパットを出す際は「OK」「ギミー」「それはいいよ」など、明確に伝えましょう。相手が構えている最中や打とうとしている瞬間にOKを出すのはNG。パットを打つプレーヤーがボールを確認し、まだ構える前のタイミングが適切です。OKをもらったら「ありがとう」と一言返すと、より良い雰囲気になります。
国による文化の違い
欧米のギミー習慣
欧米では「ギミー」の文化が根付いており、特にイギリスやアメリカではカジュアルラウンドでは当たり前の習慣です。「リーザブル」(reasonable=合理的)という表現で、「合理的に考えて入るだろう」という感覚で判断されます。アメリカではフレンドリーな傾向があり、比較的長めのパットもギミーとして認められることが多いです。
日本での独自進化
日本では欧米から伝わったギミーが「OKパット」として独自に進化しました。日本のゴルフ文化では「厳格さ」と「効率」のバランスを重視する傾向があり、距離も比較的短めに設定されることが多いです。また、「宴会コンペ」文化と結びつき、「罰ゲーム免除券」としてOKパットを活用するユニークな楽しみ方も生まれています。
仲間内ゴルフでの活用法
仲間内のラウンドではOKパットをうまく活用すると楽しさが増します。「ワンクラブレングス以内はOK」といった明確な基準を設けたり、「各自1ラウンド3回までOKパットを要求できる」といったルールを作るのも面白いでしょう。「バースデーOK」(誕生日の人は長めのパットもOK)や「初心者応援OK」など、オリジナルルールで盛り上がるのも仲間内ゴルフの醍醐味です。
マッチプレーでのコンシード
プロゴルフではマッチプレー形式でコンシードが認められています。1969年のライダーカップでは、最終戦の重要な場面でジャック・ニクラウスがトニー・ジャクリンに対して行ったコンシードが「コンシード・オブ・ザ・センチュリー」として知られています。スポーツマンシップの象徴として、マッチプレーにおけるコンシードの意義を示す出来事としてゴルフ史に残っています。
初心者が知っておくべき注意点
初心者が覚えておくべき大切なポイントをまとめます。
- 自分からOKパットを求めるのは避け、他のプレーヤーからの申し出を待ちましょう
- 公式競技や真剣勝負の場では使わないこと
- ハンディキャップに影響するラウンドでは使用を控えましょう
- OKをもらった後に「試しに打ってみる」行為はマナー違反です
- 何より、OKパットはゴルフの楽しさを高めるための文化であり、強制ではないことを理解しておきましょう